第10回
主な消化管内寄生虫

 よく子犬を飼い始めると『虫下し』をのませた、また虫が出てきたということを聞くことがあります。市販で売られている『虫下し』を購入して犬や猫に飲ませている方もいるかと思います。が、実は市販の『虫下し』では効果のないおなかの寄生虫も実はたくさんいるのです。今回はよく見られるおなかの中の寄生虫についてです

@回虫


虫卵

虫体
           

〔この病気について〕

 回虫は犬猫に最も多い消化管寄生虫です。ペットは汚染された土壌や便に含まれる卵や幼虫を食べたり、感染したげっ歯類、鳥、ある種の昆虫を食べることによって感染します。子犬や子猫はまだ母親の子宮の中にいるときに感染します。嚥下された幼虫は体を通って腸に移動し、成虫になります。雌の成虫は卵を産み、その卵は便と一緒に排泄され、感染幼虫となります。
 診断は顕微鏡による糞便検査で虫卵を確認して行います。

〔公衆衛生的意義〕

 回虫の幼虫(成虫ではなく)による人間への感染は衛生的に良ければ滅多に起こりませんが、汚染された土壌や便を摂取することによって感染します。子供達には動物と遊んだとき、特に子犬や子猫と遊んだとき清潔にすることが大事だと教えてください。人間への感染を防ぐ最良の方法は、定期的に検査を行い、必要なら治療を行って、ペットから回虫を無くすことです。

〔管理方法〕

1.糞便検査を定期的に行う
2.雌の犬猫は繁殖させる前に、また仔犬や子猫は離乳の前後に糞便検査を行う
3.衛生的に良くすることが必要です。ペットを飼っている場所からすぐに便を除去する
4.虫卵は感染力が1年間残るので消毒が必要です。汚染された土壌は感染源となります。


A鉤虫



虫卵

〔この病気について〕

 鉤虫は比較的多い犬猫の消化管寄生虫です。成虫は小腸に寄生し、卵は糞便に排泄されます。診断は顕微鏡での糞便検査による虫卵の確認で行います。
 動物は成熟虫卵や幼虫を食べたり、皮膚や足の裏から幼虫が侵入したり、母親の子宮の中で幼虫が胎児に移行したりすることによって感染します。卵から幼虫になるまで15〜26日分かかります。
 鉤虫はもっともひどい消化管寄生虫のひとつです。動物の血液を吸血してひどい貧血を起こします。若い動物、弱っている動物、栄養状態の悪い動物では、鉤虫は突然の衰弱や死を引き起こします。年を取った動物や抵抗力のある動物ではゆっくり進行性に衰弱して行く病気です。鉤虫寄生の動物では体重が減少したり、下痢、タール様便、血便を頻繁に起こします。

〔公衆衛生的意義〕

 鉤虫の幼虫(成虫ではなく)は人間の皮膚に侵入して皮膚幼虫移行症あるいはクリピーング病と呼ばれる皮膚病を起こします。この感染はあまり起こりませんが、鉤虫がいるペットに接触した後で皮膚に湿疹ができた人は人間のドクターに相談してください。

〔管理方法〕

1.糞便検査を定期的に行う
2.雌の犬猫は繁殖させる前に、また仔犬や子猫は離乳の前後に糞便検査を行う
3.衛生的に良くすることが必要です。ペットを飼っている場所からすぐに便を除去する

 

B鞭虫



虫卵

〔この病気について〕

 鞭虫は大腸と盲腸に寄生する小さな細い虫です。盲腸は小腸と大腸の間にある行き止まりの袋で、人間の虫垂に似ています。
 鞭虫という呼び名は、虫体の形からつけられたものです。とても繊細で、しっぽのように先細りになり細い鞭のようになっています。小さいので便の中に見つけることが困難です。
 鞭虫によって下痢や血便が起こり、健康が損なわれます。大量の盲腸出血を時々起こします。便を顕微鏡で調べて診断します。虫の卵を見つけるために繰り返し調べなければならないこともあります。卵が感染してから動物の便に卵が出てくるまでに約3〜4ヶ月かかります。

 

Cコクシジウム



コクシジウム・オーシスト

〔この病気について〕

 コクシジウム症は顕微鏡で見える位、小さいコクシジウムという原虫によって起こる消化管の寄生虫病です。この病気は汚染された便と接触することによって動物から他の動物へ広がります。感染後3ー6日の潜伏期の後、泥状〜水様下痢便が始まり食欲低下ないし廃絶、若い動物、弱っている動物では症状が重く粘血便となり死に至ることもあります。

Cコクシジウム



栄養型虫体

〔この病気について〕

 ジアルジアは人間や犬猫、その他の動物の消化管寄生虫です。これはランブル鞭毛虫とも呼ばれる顕微鏡で見なければ判らない位小さな原虫によって起こります。動物は汚染された便、食物、水を飲み込んで感染します。ジアルジアは主に小腸上部に寄生します。感染は便に感染シストが排泄され、再びサイクルが始まります。
 診断は難しく、何回も糞便の顕微鏡検査を繰り返してシストの発見が必要です。
 一般的な症状は淡色で油っぽい持続的な下痢や薄い血便です。ジアルジアは食物の吸収を妨げ、デリケートな腸粘膜を傷つけて消化を妨げます。

〔公衆衛生的意義〕

 ジアルジアは人間でも比較的多い消化管寄生虫です。ジアルジア症であるとペットが診断されたら各個人の衛生予防を実施すべきです。ペットの便をきれいに掃除して、きちんと処分してください。子供達には便に触れさせないようにしてください。

 

E条虫


虫卵

虫体
           

〔この病気について〕

 条虫は犬猫の消化管に見られる寄生虫です。頭部と長い平な片節の体部からなっています。片節は便中に排泄され、頭部は消化管粘膜に付着して新しい片節を作ります。日本には犬猫に寄生する何種類かの条虫がいますが、多いのは瓜実(うりざね)条虫です。
 条虫症はペットに著しい症状を示しませんが、消化不良、食欲不振、被毛失沢、体重減少、腹部の不快を示すことがあります。条虫症は糞便、寝床、肛門周りの毛に付着した片節の発見によって診断します。虫卵は便の顕微鏡検査では見られません。最初に排泄された時の片節は黄白色で6mmぐらいの長さで伸びたり縮んだりします。乾燥すると片節とはキュウリの種や米粒に似ています。
 条虫は直接ペットからペットに感染しないで、中間宿主を必要とし、そこで発育します。一般に中間宿主はノミやハツカネズミ、ネズミ、リス、ウサギのような小動物です。ある種の条虫は魚を中間宿主にするものもいます。

 

 



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