第15回
猫の心筋症について

 心筋症は猫の心疾患として極めて重要です。特に原因不明で急激に悪化する傾向を示すため、できるだけ早期に治療する必要があります。


分類


 猫の心筋症は、心臓の筋肉の厚さや働きの状態によって大きく3つに分けられます。一つは心臓の筋肉がどんどん厚くなってしまう肥大型心筋症、二つ目は逆にどんどん薄くなって心臓が大きくなってしまう拡張型心筋症、三つ目は心臓が上手く広がる事ができずに働きが低下する拘束型心筋症です。

肥大型心筋症(HCM)
 HCMは猫では最も発生が多く心筋症全体の60〜70%を占めます。若い成猫〜中年期に発症が多く、また症例の60〜70%が雄猫です。HCMの原因は未だ不明ですが、遺伝的要因および先天的代謝異常が疑われています。HCMでは心筋の変性により左心室壁、心室中隔、時に右心室壁が著しく肥厚します。その結果、左心室腔は顕著に縮小し、肥大した心室は拡張性が低下(拡張不全)して血液を受け入れる事ができなくなってしまい、その上にある左心房に血液がたまって大きくなり、X線ではバレンタインハートと呼ばれる特徴的な心臓の形を見ることができます。

拡張型心筋症(DMC)
 全心筋症のうち20%を占め、中年期の猫に発生が多いです。DMCの原因は先天的には不明ですが、後天的にはタウリン欠乏、甲状腺機能亢進症などが知られています。DMCでは4つの心腔の重度な拡張が見られX線では、大きく丸まった心臓としてみる事ができます。心室および中隔の壁厚は正常または低下しています。拡張した心臓は収縮性が低下(収縮不全)して、心臓のポンプとしての機能が阻害されます。

拘束型心筋症(RCM)
 RCMの発生は稀で主に老齢猫で診断されます。RCMでは左心室の乳頭筋および腱索が変形し繊維性の癒着によって融合し、心室の充満を障害し拡張不全を起こします。

症状


 心筋症では体が必要とする血液が心臓から出なくなって全身の働きが低下し、多くの症状が出ます。
 最も重要な症状は呼吸が上手くできない(呼吸困難)ことと、一日中ぐったりとしている (運動不耐)ことです。呼吸困難は全身にまわる血液が肺に停滞し肺に水がたまる(肺水腫) ことによって起こり、同時に咳も見られます。また、比較的多い症状として後肢の麻痺が起こる場合があります。これは、心臓の働きの低下により心臓の中で血液の塊(血栓)ができ、後肢に血液を送る動脈に詰まる(血栓塞栓症)ために起こります。この状態が長く続くと後肢が徐々に壊死して動かなくなるのです。

診断


 身体所見、聴診などで心筋症が疑われたなら、心電図(洞性頻脈、左脚前束ブロックなど)、胸部X線検査(全体的な心拡大、ハート型の心臓、胸水、肺水腫など)そして超音波検査で心筋の厚さ、構造、血流を調べる事により確定診断を行います。

治療


 現在、有効な根治療法は無いが、血管拡張薬による二次的な心臓の負荷軽減療法や、 β遮断薬による心臓そのものの休息療法によりかなりの延命が可能です。そのためには早期発見、早期治療が不可欠となります。

 



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